黒姫

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希愛がレオンとロゥファに公園での出来事を説明している中、メイドが部屋の明かりを灯してくれた。


いつの間にか、部屋の中は薄暗くなっていたらしい。


それに気付かない程、希愛は説明に必死になっていた。





そして、説明を終えた希愛は一気に息を吐き出す。

自分でも現実味の無い話を、会って間もない人に話すのはかなり気力がいる。




そっとレオンを窺ってみると、何かを考えているのか、両手を組んで目を閉じていた。


ロゥファに至っては、瞳を伏せている。













「…そうか……。

あの二人が守ってくれたのか……。」


少しの沈黙の後、レオンが口を開いた。




「……あの二人?」


光の中で聞こえた男女の声だろうか。


依然として瞳を閉じているレオンに尋ねてみたが、返ってくるのは沈黙のみ。


ロゥファを見ても、困ったように苦笑を浮かべながら首を横に振っているだけだった。





「………何か知っているんですか?」



痺れを切らした希愛は、レオンに問い詰める。

ただでさえ、この状況にはお手上げの状態だ。


黒姫だの、能力だの…意味が分からない事が多すぎる。

更に疑問が増えるのは、もう我慢の限界に近かった。










「……それは、自分で思い出さないといけない。」






レオンは、ただそれしか言ってくれなかった。









「なっ……。」


そんなレオンに希愛は言葉を無くす。


質問は全部答えた。なのに、こっちからの質問には答えてくれない。


次第に怒りが込み上げてくる。






「…王、そんな言い方しなくても良いじゃないですか。」


そんな希愛を察してか、呆れたようにため息を漏らすロゥファ。


怒りで僅かに震える希愛の肩にそっと手を乗せる。




「ノア様、いずれ時が来たらお話します。

今はまだその時ではありませんが……必ずお話致します。

ですので、今は堪えてください。」





希愛を落ち着かせる為に、目を合わせてゆっくりと話すロゥファ。


「…………分かりました。」


いまだ納得はしていない希愛だったが、込み上げてくる怒りを抑え、コクリと頷く。


そんな希愛にホッとした表情で、ロゥファは目の前の少女の頭を撫でた。


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