黒姫
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
希愛がレオンとロゥファに公園での出来事を説明している中、メイドが部屋の明かりを灯してくれた。
いつの間にか、部屋の中は薄暗くなっていたらしい。
それに気付かない程、希愛は説明に必死になっていた。
そして、説明を終えた希愛は一気に息を吐き出す。
自分でも現実味の無い話を、会って間もない人に話すのはかなり気力がいる。
そっとレオンを窺ってみると、何かを考えているのか、両手を組んで目を閉じていた。
ロゥファに至っては、瞳を伏せている。
「…そうか……。
あの二人が守ってくれたのか……。」
少しの沈黙の後、レオンが口を開いた。
「……あの二人?」
光の中で聞こえた男女の声だろうか。
依然として瞳を閉じているレオンに尋ねてみたが、返ってくるのは沈黙のみ。
ロゥファを見ても、困ったように苦笑を浮かべながら首を横に振っているだけだった。
「………何か知っているんですか?」
痺れを切らした希愛は、レオンに問い詰める。
ただでさえ、この状況にはお手上げの状態だ。
黒姫だの、能力だの…意味が分からない事が多すぎる。
更に疑問が増えるのは、もう我慢の限界に近かった。
「……それは、自分で思い出さないといけない。」
レオンは、ただそれしか言ってくれなかった。
「なっ……。」
そんなレオンに希愛は言葉を無くす。
質問は全部答えた。なのに、こっちからの質問には答えてくれない。
次第に怒りが込み上げてくる。
「…王、そんな言い方しなくても良いじゃないですか。」
そんな希愛を察してか、呆れたようにため息を漏らすロゥファ。
怒りで僅かに震える希愛の肩にそっと手を乗せる。
「ノア様、いずれ時が来たらお話します。
今はまだその時ではありませんが……必ずお話致します。
ですので、今は堪えてください。」
希愛を落ち着かせる為に、目を合わせてゆっくりと話すロゥファ。
「…………分かりました。」
いまだ納得はしていない希愛だったが、込み上げてくる怒りを抑え、コクリと頷く。
そんな希愛にホッとした表情で、ロゥファは目の前の少女の頭を撫でた。