黒姫

「………十年程前に、その一族は全滅した…そうです。」


「………え…?」




(…全…滅……?)






リーンの言葉に耳を疑いたくなった。






「漆黒を持つ一族の能力を恐れてか……イースタリアが《黒狩り》と称して、一族を滅ぼしたと言われています。」
















そんなリーンの言葉で、周りの音が一気に無くなった気がした。










もしかしたら、日本人がいるのかもしれない…。

帰れる方法とか分かるかもしれない。





希愛に芽生えていた淡い期待が、一気に砕かれた。






「…ですので、漆黒を持つ者は……今はノア様お一人なんです。」


「そう……ですか…。」



一気に脱力感が襲いかかった。

少し項垂れる希愛。黒髪で隠れてしまったその表情は見えなかった。


それを見てリーンは顔を辛そうにしかめたが、すぐに元の笑みを浮かべ「ですが…」と言葉を紡ぐ。




「もしかしたら、私達の知らない場所で漆黒の一族が生き残っているのかもしれませんわ。

…ノア様がここにおりますように、きっとその一族もどこかにいるはずです!!」







だから、あまり気を落とさないでくださいませ…。














そんな優しいリーンの言葉に、希愛は泣きそうになった。

口を開けば涙が出てきそうだったので、ただ頷くことしかできなかった…。


< 57 / 63 >

この作品をシェア

pagetop