黒姫
リーンさんが持ってきてくれた朝食を食べ終わった後、私はシャワーを浴びた。
湯船にお湯が張ってなかったから入れなかったけど……シャワーで十分。
だって……あのお湯だったら、きっとまた入れない。
あんなお湯は、映画で出てくるお金持ちの人が入るようなものだもん。
そして、シャワーを浴びた後にリーンさんが準備してくれた淡いピンク色のワンピースを着た。
膝元の裾が白いレースで可愛い。
長袖だから、上に羽織らなくても大丈夫そうだった。
「これで良しっと。」
首元の包帯を巻いて、鏡にうつる自分を見た。
包帯の下にある痣はまだはっきりと残っている。
それをマジマジと見る勇気は無かったから、少し急ぎ気味に巻いた。
包帯は少し曲がってるような気がするけど、見えなきゃ大丈夫だよね。
最後にもう一度鏡を見て、リーンさんがいる部屋へと戻った。
「お早う御座います、ノア様。」
「おはようございます……えっと、ロゥファさん?」
部屋に戻ると、ソファーで水色の髪の男性が座っていた。
私の姿に気付くと、その男性は立ち上がって挨拶と共に一礼した。
昨日、レオンさんと一緒にいた男性。名前はロゥファさんだったはず。
私も挨拶と同時に慌てて一礼し、少しうろ覚えだった名前を口にしながら、パタパタと小走りでその男性の近くへ向かった。
そうしたら、その男性が驚いたように目を開いた。
「名前を覚えていてくださったんですね。」
「あ……はい…。」
良かった、と嬉しそうに微笑むロゥファさん。
笑うと目尻が少し下がる。
水色の瞳が、日の光に照らされてとても綺麗に見えた。
水色の髪もキラキラ光ってて、晴れの日の雨みたいだなって思った。