黒姫

腕を下ろした瞬間に、黒のフードをかぶった人が私の目の前にいた。




「……っ…?!?」


ガッ…と、何かに首を掴まれた。それは手だったと思うけど、ゾッとする位冷たくて…。






「か…はっ……!!!」

息が出来ない程、私の首をぎゅうぎゅうと締め付けてくる。

フードを深くかぶっているせいで顔は見えない。ただ、口元が歪んでいる。













「………見ぃーつけたぁ。」









歪んだ口元から出たフードの人の声。それは男の声だった。

ねっとりとする声。気持ち悪かった。





抵抗しようと私は必死に足をバタバタ動かしたり、首を絞めている手っぽいものに爪を立てたりした。

けど、さっきよりも更に力が加わってきた。
息ができない苦しさや恐怖で、生理的に涙が出てくる。










「……ぁ………っ…」




ヤバい。何か白いもやもやが私の頭を支配してきた。

腕や足を動かそうとしても、鉛のように重くてちっとも動いてはくれない。



それに、まぶたが落ちてきた。







フードの男は何かブツブツ言ってるけど、何を言ってるの分からない。
頭に酸素がいかないせいか、耳がキーンとする。









(あぁ…私、死んじゃうんだな。)











薄れてきている意識の中でそう思った瞬間、白い光が一瞬にして辺りをおおった。



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