君色Diary
「……七海、直せないの?」



聞こえてきたそんな声に、弱々しく頷く。


空くん、呆れてるよね……。

数学だけじゃなくて、手先まで壊滅的なんて……。

あたし、女としてどうなの……。


どうせなら、と、前に一度、空くんに褒めてもらえた髪型を毎晩練習すること数日。

髪を巻くだけで何度もやけどをすれば、働いて疲れているお兄ちゃんに苦労をかける日々。

それでもなんとか形になると、笑って“よかったね”なんて言ってくれて。

今日、やっと学校にもしてくることができたと思えば、崩れて直すこともできない始末。


自分が情けなく思えてきたよ……。

葉月とかだったら、お兄ちゃんみたいにすぐ直せるんだろうなぁ……。

このままだとボザボザだし、もうほどいて、ひとつにまとめるしか……。



「って……え……?」



髪をほどこうと体を起こせば、不意に髪に触れた手。

それに驚いてピタッと止まれば、クイッと髪を少し引かれる感覚がして。



「……できた、か?」



きょとんとしていれば、苦笑した空くんがあたしを見た。



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