君色Diary
……隣、座りたいな……。
正面から見る空くんは遠くて。
茉莉花ちゃんが帰った後の30分間だけ空白の席。
そこに自分がいたことが、遠い昔のように感じる。
座りたくても、座れない。
透明な壁が、空くんの隣を守っているように感じて。
「七海、ごめんな?その……ただの幼馴染ってだけで、泉につきっきりで……」
不意に話し出した空くん。
その言葉に、あたしはもう何度目か分からない作り笑いを浮かべて返す。
「ううん、気にしないで」
本当はもっと空くんと話したい。
隣に座って、前みたいにいっぱい話したい。
でも、見えない二人の空間に、あたしが入ることはできなくて。
今だってそう。
空くんの隣は空いてるのに。
あたしは正面に座ったまま、申し訳なさそうにする空くんに嘘の笑顔を返すだけ。