君色Diary
「ごめんね……。あたし、もう帰るね」


「ちょ、七海……!」



俯いたまま、そう言って立ち上がれば、パシッと腕をつかまれる。

灰色の空は、今にも雨が降り出しそうで。




「待てって……!いきなりどうして……」


「いきなりじゃない……!!」




思わず叫んだ声は、思ったよりも大きく響いて。

バッと顔を上げれば、驚いた表情の空くんと目が合った。

その拍子に、涙があふれて。



「……いきなりじゃ、ないよ……。茉莉花ちゃんが来てから……いいことなんて、ひとつもない……」



スルッと離れた手。

あたしは呟くようにそう言うと、空くんに背を向けて走った。

涙でぬれた頬を、振り出した雨が、さらに濡らして。



< 235 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop