君色Diary
「あ、あの……空くん……」



引かれる腕をどうにもできないまま、ただ空くんの後に続けば、空くんは腕をつかんだまま、イスにドカッと座って。

空くんは疲れたようにため息をつくと、黙って俯く。

いつからついているのか、クーラーの冷気を逃さないため、窓などは、もちろん閉められてるわけで。

茉莉花ちゃんの時といい、何度目かの沈黙が続く。

その間、あたしの腕は放されることはなくて。

ドクンドクンと、緊張した胸の鼓動が、やけに大きく感じる。


……あたし、どうすればいいんだろ……。

腕、持たれたままだし、空くん、何も言わない……。

だからといって、横に立ったままっていうのも……。


こういうときこそ、空くんに聞けばいいだけのこと。

そう思うのに、あたし達を包む空気が、それを許してくれそうになくて。


とりあえず……手、離してもらわないと……。


微かに震える手で、空くんの手を離そうと、ゆっくりと近づけていく。

そして、空くんの指に触れて、それを離そうとすれば。



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