君色Diary
隣に座った後も、放してもらえそうにない腕。

そこから空くんの体温が伝わってきて、余計に胸がうるさくなる。

静かな沈黙は、そんなあたしの胸の鼓動を、空くんに伝えてしまいそうで。



「あ、あのねっ、空くん……」


「……待った」



とにかく、この沈黙をどうにかしたくて。

なにも考えずに、とりあえず口を開けば、空くんの声に遮られる。

それにピタッと口を閉ざせば、空くんは真剣な眼差しであたしを見て。



「……もう、風邪は治ったんだよな?」


「えっ?あ……う、うん……」


「……そっか」



空くんは呟くようにそう言うと、体から力を抜くように、「ふーっ」とため息をつく。

すると、フッと、張り詰めていた空気が、緩くなった気がした。


そして、再び空くんに見つめられれば。



「……久しぶり……だな」



そう言って、ぽんっと頭に手が置かれた。


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