君色Diary
「お兄ちゃんも花火大会行くんだよね?……その女の子と一緒に」


「うん……って、え!?な、なんで七海、知って……」


「内緒!あたし、頑張るから……お兄ちゃん、楽しんできてね」



あたしはそう言うと、まだ何か聞きたげだったお兄ちゃんを「着替えるから!」と部屋から出す。

パタン、とドアを閉めれば、クスクスと笑みがこぼれて。


お兄ちゃん、恥ずかしそうだったけど……嬉しそうだった。

お兄ちゃんのあんな顔、初めてみたかも……。



「茉莉花ちゃんとお兄ちゃん、うまくいけばいいな……」




そう呟きながら視線を机に向ければ、開いていた手帳と、キラキラ輝く髪留めが置いてあって。

手帳をそっと手に取ると、パラパラとページをめくっていく。

カラフルなページが続く中、空くんと出会ってからは、さらにたくさんの色で染まっていて。

そんな中、一度も使われていない色は、一色だけ。

あたしの大好きな人の、イメージカラー。



「……今日、使えたらいいな……」



そっと筆箱から取り出した、“スカイブルー”のペン。

それを静かに手帳に挟んで机に置くと、代わりに髪留めを持つ。



「……よしっ!」




淡いピンクは、空くんと出会ったときの色。

あたしは顔を上げると、バッと浴衣に手を通した。


< 331 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop