君色Diary
「……空、くん」



小さく呟いた名前。

それにゆっくりと、空くんが振り返る。


もう、後戻りはできない。


あたしたちを包む空気が、そう教えてくれる。

膝の上で、ギュッと握った手。

ジッと見つめた瞳は、同じように、あたしを見つめ返してくれて。



また遮られるかもしれない。

今言って、ダメだったらどうするのか。

そもそも、なんて言えばいいんだろう。



今までずっと考えていたそんな言葉は、すべて頭から消えて。



「……あたし、ね」



たったひとつ、純粋で、簡単な言葉だけが、はっきりと残った。




「………空くんが、好き」






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