君色Diary
勝手に動いた唇。

それはいとも簡単に、あたしの想いを紡ぎだして。



「好き……。空くんが、好きなの……」



ドキンドキンと、胸が鳴る。

何度も何度も、想いを伝える。


だって……それしか思い浮かばないから。

他の言葉なんて、今はいらない。

“空くんが好き”

ただそれだけが伝われば、それでいいの。



「……七海」



空くんがゆっくりと、あたしの名前を呼ぶ。

伸ばされた手は、そっとあたしの手の上に置かれて。



「会った時から、ずっと好きだった……。あたしは、ずっと……」




「好き」と言った言葉は、途中で途絶えた。



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