君色Diary
「………っ!!」



スッと優しく唇をなぞる指に、ビクッと体が震える。

バックンバックンと鳴る胸は、これ以上ないってくらいにうるさくて。



「あっ……あの、とき……っ?」


「そ。図書室で……七海が俺に飛びついてきたとき」



空くんはそう言いながらも、あたしの反応を楽しむように指を滑らせる。

それと同時に、背筋はゾクッと震えて。



「本当はあのとき……ちゃんと、告白聞こうと思ってたんだよ。でも……俺、汗かいてたから、ちょっと無理だなーと思って」


「む、無理って……?」


「汗かいてたら……七海を思う存分、抱きしめられない」



そう言うと、空くんにギュッと思い切り抱きしめられる。

それは少し苦しくて。

でも、とてもあったかくて、心地よくて。

愛しくて、安心できる空間。


それに反射的にあたしも抱きしめ返せば、フッと腕の力が弱まって。

“どうしたんだろう?”と思えば、ほんの少し距離を作って、ジッと見つめられる。

その表情は、少し呆れ気味で。


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