転校生は憧れの人
そんな時。
「れーんーーっ!」
突然、扉の方から少し低めの……でも甘い大人びた感じの女性の声が教室に響いた。
聞き覚えのない声。
でもそれは、私の知る人物を呼ぶ声で。
「なーんだ、まだ来てないのかぁ」
綺麗な長い黒髪を人差し指に絡めながら、その人は残念そうに呟く。
凄く綺麗な人だ。……憐くんの知り合いなのかな?
そんな考えを頭に過ぎらせながら、私はなんとなく見つめる。
――バチッ。
その時、不意にも視線がはっきりと重なり合った。
ヤバい。
瞬発的に目を逸らした、その瞬間。
「……あっ!」