転校生は憧れの人



――……



時はあっという間に過ぎ、今日はとうとう文化祭前日。


まだまた実感の湧かないまま、時間だけが過ぎていったように感じる。


そして今、私達は最後の放課後練習をしている。



「ただいまー!」


「おかえり」



憐くんと滝川くんの特別個人レッスンは、まだ続いていたようで。それから帰ってきた吉野くんは、扉を開けるなり元気に声を発した。



「……あれ、和人は?」


「あぁ。落合くんなら部活に行ったよ」



“ごめんね”


そう、申し訳なそうに頭を下げる落合くんの顔を浮かべながら、私は吉野くんに返答する。



「そうなの? そういやバスケ部、もうすぐ大会あるみてぇだもんな」


「そうなんだ……」



まさかそんな大変な中、今までずっと劇の練習をしていただなんて。


本当に凄いな。


私は改めて落合くんに感服した。



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