転校生は憧れの人



「あのー」
 


ザワザワとした雰囲気を切り裂くように、その声は空気を震わした。



「どうした、怜佑?」


「何か、高月憐くんが王子役やりたいって言ってまーす」



滝川くんは手を挙げると、ニヤリと口角をあげてそういった。



「はぁ!? 勝手に――」


「あれ? 逃げるんや。まあでも仕方ないか。王子なんて大役、お前には“絶対無理”やもんな」



反発する憐くんに、滝川くんはまるで挑発じみた言葉を投げかける。


……どうなってるの? 


展開について行けない私は、ただ2人のやり取りを見守ることしかできない。



「憐は無理、か。他に誰かいな――」


「何言ってんの吉野。誰が無理って言った?」



吉野くんを遮る彼の声に驚いて。


まっすぐ滝川くんを見る彼の視線に、私の心臓は大きく跳ねた。




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