転校生は憧れの人
――ピンポンパンポーン。
『下校時間30分前です。文化祭の準備をしている生徒は速やかに片づけをし、7時までに下校してください』
「えっ」
「マジかよ。もう時間なわけ?」
早くも鳴り響いた作業中止を知らせるアナウンスに、クラス中は一気にざわめく。
ふと時計を確認してみると、もう6時半になっていた。
「どうすんだ」
「……しゃーねぇから帰るか」
そんな吉野くんの言葉に、皆はそろりそろりと動き出す。
「憐くん……」
「大丈夫。俺に任せて」
不安な表情で憐くんを見る。
明日は本番。それは、どんなに願っても変えようのない事実だ。
芯がある彼のその言葉に、私は黙って頷いた。