転校生は憧れの人
カッと明るく舞台を照らす照明。
その光に包まれて、少し前を見る。
その瞬間、私は在校生の多さに一瞬ギョッとした。
頭ではわかっていたものの、実際に目にするのとは比べものにならないもので。とてつもない緊張が全身を侵す。
駄目だ……やっぱり緊張するよ!
手が、足が、声が、全てが震える。
――だけど。
それじゃいけない。駄目なんだ。
しっかりするのよ、私。
皆のためにも、落合くんのためにも……憐くんのためにも……私が頑張らなきゃいけないんだから。
私が……。
――そんな時。
“心から楽しもうぜ”
数分前の吉野くんの言葉が、ふっと脳裏に浮かんだ。
「――っ」
その瞬間、何故だか全身に入った力がすっと抜けたような気がした。