転校生は憧れの人
「変わらな、い……?」
聞こえてきた言葉に耳を疑った。
え。だって、それって……。
「アンタさ、相変わらずドジだよね」
……っ!
憐くんはニヤリと笑うと、少し冷たく言った。
「あの、憐くん。私のこと、わかるの?」
「わかるっていうより、さっき思い出した。そんなドジな奴、一ノ瀬しかいないしね」
「……うぅ」
酷いよ憐くん……。
ってことは、私が教科書を落としてなかったら、思い出してもらえてなかったんだよね?
何か、そう考えると凄く惨め。……それでも。
“一ノ瀬”
ずっと聞きたかった懐かしい響きが嬉しすぎて。
たとえ情けない私でも、憐くんの記憶の隅に私が残ってたことが幸せすぎて。
私は思わず笑顔になってしまった。