転校生は憧れの人



しかし憐くんはというと、俯いたまま何も話そうとはしない。



「あれー? 照れてるの」


「違うから。ってかさ、言わないって言ったよね?」



ようやく口を開いた憐くんは、どこか怒り口調で。



“迷惑かけたくなかった”



それが本当だったんだって思うと、憐くんの優しさに触れるようで何だか心は嬉しくなった。



「じゃ、皆そろそろ着替えに行くか」



元気いっぱいの吉野くんの声が耳に届く。



「なずな、行こ!」


「うん!」



笑顔の梓ちゃんに返事して、まだ鳴り止まない楽しかった舞台の余韻を胸に、私達は更衣室へと向かっていった。




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