転校生は憧れの人
「どうしたの? 何かいいことでもあった?」
「え、いや」
憐くんの視線の先には、にやけた私の顔。
は、恥ずかしい……。変な奴だって思われたかな?
私は緩んでしまっている顔を咄嗟に元に戻す。
羞恥のあまりか、顔の辺りが火照るのがわかった。
「一ノ瀬って、やっぱ面白いね」
「そ、そんな……」
「じゃあ」
「あっ……!」
……行ってしまった。
全てのことが急すぎて、どうにも出来なかった自分が情けない。
おかえりなさい、って言いたかったのにな。
久々に近くで感じた彼の存在。その余韻に、私は暫くの間浸っていた。