転校生は憧れの人
サァァ、と耳を掠める風の音。
ちらりと覗くと、彼は目を丸くしていて。
ついに、言ってしまった……。
言い放った後で自分の発言を悔いた。
今回ばかりは、聞いてなかったなんて言葉は通用しないのだから。
「えっと、あのだから憐くんが王子で緊張しちゃって、びっくりして、その……」
恥ずかしさを隠すように、そして憐くんの反応が怖くて、私は1人淡々と喋り続ける。
顔が上げられないよ……。
「……じゃあ、観覧車のアレは空耳じゃなかったんだ」
「っ!?」
か、観覧車のアレ? それって絶対……。
いやぁぁぁぁ! やっぱり聞こえてたんだ!
ぽつりと知らされた真実に、もう恥ずかしさはマックスで。
私は暫く地面とにらめっこする。
それを変えたのは――。
「それで? 俺にどうかしてほしいわけ」
憐くんの悪戯っぽい一言だった。