転校生は憧れの人



サァァ、と耳を掠める風の音。


ちらりと覗くと、彼は目を丸くしていて。


ついに、言ってしまった……。


言い放った後で自分の発言を悔いた。


今回ばかりは、聞いてなかったなんて言葉は通用しないのだから。



「えっと、あのだから憐くんが王子で緊張しちゃって、びっくりして、その……」



恥ずかしさを隠すように、そして憐くんの反応が怖くて、私は1人淡々と喋り続ける。


顔が上げられないよ……。



「……じゃあ、観覧車のアレは空耳じゃなかったんだ」


「っ!?」



か、観覧車のアレ? それって絶対……。


いやぁぁぁぁ! やっぱり聞こえてたんだ!


ぽつりと知らされた真実に、もう恥ずかしさはマックスで。


私は暫く地面とにらめっこする。


それを変えたのは――。



「それで? 俺にどうかしてほしいわけ」



憐くんの悪戯っぽい一言だった。







< 174 / 309 >

この作品をシェア

pagetop