転校生は憧れの人
始まりはすぐそこに
-Nazuna side-
「なずなー! 早く起きなさい」
「ん……ふぁ~。今何……って、8時ぃ!?」
手に取った目覚まし時計に告げられた事実。
やばい。これは相当な緊急事態だ。
役に立たない目覚まし時計を投げ捨て、まだ半分寝ぼけている頭をフル回転させる。
ぼさぼさの髪のまま急いで着替えると、私はリュックを掴んで超特急で階段を駆け下りた。
「お母さん、もっと早く起こしてよ!」
「何回も起こしたわよ。それでも起きなかったのは、なずなでしょう?」
「うっ」
残念ながら、反論できない。
寝坊の理由は単純明快。久々の憐くんにドキドキしすぎて眠れなかったのが、間違いなくその元凶である。
「行ってきまーす!」
今までにない速さで身支度をすませると、私はおにぎりをくわえて家を飛び出した。