転校生は憧れの人
「おはよ。今、大丈夫?」
「うん」
私は声の主である弥生ちゃんに返事すると、梓ちゃんに断って教室を出る。
どうやら彼女は体操着を忘れてしまったようで、私にそれを貸して欲しいとの事だった。
「な何、梓ちゃん!?」
いつになく神妙な面持ちの梓ちゃんに驚かされる。
「あんた、王子のこと長嶋弥生に話した……?」
「話してないけど」
「今気付いたんだけど、もしつき合ってることばれたらマズイ事になりそうじゃない?」
「ふふっ」
あまりに真面目な顔をするものだから、私は彼女が堪らなく愛おしくなって笑ってしまった。
「ちょ、何!あたしは真剣に──」
「実はその事なんだけど……」
私は、梓ちゃんに話してなかったとある出来事を語りはじめた。