転校生は憧れの人
『なずなちゃん、ちょっといい?』
昨日、演劇のステージが終わたあと。
更衣室から出たところで突然現れた弥生ちゃん。
梓ちゃんに断りを入れた私は、促されるまま1人で着いて行ったんだ。
急にどうしたんだろう。何かあったのかな。
悶々と考えてるうちに、気づけば人通りの少ない廊下の隅にまで来ていた。
緊張でいっぱいいっぱいだったせいか、そこまでの記憶はかなり曖昧だけど。
もうどうしていいかわからなくて。頭が回らなくて。心臓が爆発しそうで。
とにかく、憐くんに対する自分の想いを正直に打ち明けなきゃ。
そう思った私は、大きく息を吸い──。
『弥生ちゃん! あの、私、弥生ちゃんに言わなきゃいけないことがあって……』
『え?』
『私も憐くんが好きなの! 大好きなの……!』
勢いよく発した言葉。実際にはそれ程大きくはなかったのだけれど、それは確かに廊下に響いた。
沈黙。
私は目を伏せたまま上げることができない。
『……何それ』
そんな空気を打ち破ったのは、弥生ちゃんの声だった。