転校生は憧れの人



「ナツー?」



吉野くんに近付くと、梓ちゃんはそっと声をかけてみる。


すると彼は、ゆっくりと頭を上げて私達を見た。


窺える表情。そこにはやはり、いつもの元気さはなく。



「梓……どうした?」


「どうした、はこっちの台詞! アンタ大丈夫なの?」



まるで正気のないその姿。


私は心配でならなく、ギュッと手を握る。



「ははー、大丈夫だよ。ちぃっと色々あるだけだから」



そうやって吉野くんは、作り笑いを浮かべて答えた。


ちょっと待って。何でもないような言い方だけど、要するに何かあるってことだよね!?



「吉野くん、よかったら私達に話してくれないかな」



唇を噛みしめて、吉野くんをまっすぐと見つめた。



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