転校生は憧れの人
「「俺達(等)には何の一言もないんだ(かい)」」
息ぴったりに、綺麗にハモられた2つの声。
振り返ってみれば、じーっと吉野くんを睨みつける憐くんと滝川くんの姿があった。
「まさか、一ノ瀬と椎名だけで済ませるなんて……しないよね?」
「いやっ、それは……そのー」
「あー、そーかそーか、これからやったんかー! お前、これから言おうと思とったんやろ。悪いなー、俺等ちょっと気ぃ走っとったみたいやわ」
「うぐっ」
2人から攻められて、吉野くんは露骨に眼を泳がせる。
「あ、ありがとうござい……ました」
何ともか細い声。
決して視線を合わせることなく、吉野くんはぼそっと呟いた。
「はっはっはー! 別にええねんでー、吉野」
「どういたしまして」
見るからにわかる。
……2人とも、凄く満足そうだ。
滝川くんに至っては、吉野くんの肩をぽんぽんと叩いて笑顔さえ浮かべていて。
「……やっぱ子供だね、2人」
「……うん」
呆れた物言いの梓ちゃんに、私は激しく同意した。
――こうして、波瀾万丈なテスト期間は幕を閉じたのだった。