転校生は憧れの人
たまたまじゃ、ない?
「どういうこと?」
自然と出された言葉。
じっと黙って、なずなの返答を待つ。
「あのね。梓ちゃんが水筒を取りに行ってからちょっとしてくらいに、滝川くんに聞かれたの。梓ちゃん、どこに行ったんだって」
「うん」
「それで、更衣室に行ったよって教えたら……」
……教えたら?
あたしは彼女の表情を、そっと見守る。
「急に血相を変えて、飛び出して行っちゃったの」
「……あいつが?」
「うん。きっと滝川くん、梓ちゃんのことが心配だったんだよ」
嘘。
何それ、聞いてない。
あたしには、全くそんな風に見せなかったくせに。
たまたま通りかかったって、言ったくせに。
……そんなの、ズルいよ。バカ。