転校生は憧れの人
「……チィ」
完全に見失った。
どんなに目を凝らして遠くを見ても、どんなに辺りを見回しても、それらしい姿は1つも見えない。
……っ、くそ。しくじった。
この間に、最愛のなずなにもしものことがあったら……。
くっ、俺がもう少し気をつけてりゃよかったんだ。
こうしちゃいられねー。
なずなぁ……どこ行ったんだよーーっ!?
俺は唇を噛みしめ、猛スピードで捜索にあたった。
……そんな時。
「一ノ瀬くん? ……一ノ瀬くんだよね!」
そう聞こえてきた瞬間、髪の長い女が笑顔でこちらに駆けてきた。
おいおい、マジかよ。
よく見りゃそれは同じ大学の生徒で。名前は思い出せねぇが、何回か話したことがある奴だった。
……ん? てか、何でわかったんだ?
俺の完璧の変装を暴くとは、恐ろしい女だぜ。
……じゃなくて!
何感心してんだよ、俺! 今は、妹の一大事だっつーのに。
そして俺は、ある手段にでることに決めた。