転校生は憧れの人
「……やっぱりそうだ! ねぇ、何でそんな変な格好してるの?」
近づくとすぐ、その女はじろじろと見ながら尋ねてきた。
そして俺は、一呼吸置いて口を開く。
「あの……人違いでは?」
「へ?」
「自分、椎名っていいます。それでは……」
……そう。
ある手段――それは、他人のフリをすることだったのだ!
なずなの親友の名字を拝借した俺は、いつもより高い声を出し、がらりと口調を替えて話した。
我ながら、演技は得意な方だと自負している。
ふふふ、ふ。……完璧だ。
どこにも非はなかった筈。
これで絶対大丈夫。撒けた!
そうやって、高をくくった瞬間――。