転校生は憧れの人
「あ。一ノ瀬さ、もしかしてまだお兄さんに話してないの」
「え? 話す……?」
肩を落としたまま、俺は瞬時に聞き耳を立てる。
ん? 何々?
俺に話してねーって……?
「だから、俺の彼女になったってこと」
「ひぇっ!? あ、ああ……うん」
……え?
ちょっと待てよ。今アイツ、何か言った?
いやいやいや。
“何も言っていない”
……あれは、ただの幻聴だ。
は、ははは……はっはっはっ!
何てたちの悪ぃ空耳聞いてんだよ、俺。それとも、悪夢?
いや――。
「あ、あのね、お兄ちゃん。今まで内緒にしてて、ごめんなさい。ずっと言おうと思ってたんだけど……実は私、ちょっと前から憐くんと……つき合ってるの!」
現実。
それは、紛れもない……現実だった。