転校生は憧れの人
「なずな、お兄ちゃんのこと大大大好きだよな?」
「う、うん」
「何言ってんの。一ノ瀬は俺が大大大大大好きなんすけど?」
あっと言う間に始まる闘い。いや、“戦争”と呼んでも過言ではないかもしれない。
それから数分、“やめてー!”というなずなの叫びが加わるまで、このやり取りは延々続いた。
「……まだ、認めたわけじゃねぇからな」
「はいはい、わかってますよ」
慣れたようにかわす憐。
そんな仏頂面で自信たっぷりな奴の耳許に、ひとつ。
「アイツのこと、泣かすんじゃねーぞ」
「それも、わかってますから」
「ならいい」
お前を託しても大丈夫だって、思えるそのときまで。
全身全霊をかけて俺が守ってやるからな、なずな?