転校生は憧れの人



まだ微かに残る、手の温もり。


私、何もしてあげられてないのに。


っていうか!


不意に、あることが私の不安をかきたてる。


“もしこの場面を憐くんに見られていたら”


恐る恐る、私は憐くんを見る。


……良かった、大丈夫だ。


机に伏せて寝ている彼の姿を確認して、私は安堵した。



ーー……



放課後。


私は勇気を出し、憐くんとの接触を試みようとまだ席に着いている彼に近付いた。


今日は部活も休みだし、一緒に帰れたら……。



「憐くん」



そっと呼びかけてみると、ぴくりと反応する。


……ところが、彼は私を一瞥すると、すぐに視線を机にやった。


な、何で!?


よく見ると、いつもよりほんの少し不機嫌そうで。


もしかして疲れてるのかな?


そう、心の中で考えていると――。




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