転校生は憧れの人
「な、ない、です」
最悪の事態が頭に浮かんだ瞬間小さく唇が震えて、気付いた時には弱々しい声が響いていた。
ど、どうしよう。
私……嘘、ついちゃった。
「あーそう」
憐くんは私の方に顔を向けると、溜め息をついてそれだけ呟いた。
見たことのない瞳。
心臓がバクバクと大きく音を立てる。
「あの――」
「俺、今日用事あるから」
「憐く……」
勢いよく立ち上がった彼。
鞄を手に持つと、一切振り返ることなく教室を出て行った。
「……」
残された私はどうしようもなく、ただ立ち尽くすばかりだった。