転校生は憧れの人
ーー……
そして、一時間目の休み時間がやってきた。
気まずくても、しっかり言わなきゃ!
緊張で固まった身体を奮い立たせ、そして私は席を立つ。
念のために、人の字を3回書いてごくりと喉を鳴らす。
後は憐くんの席まで歩き、“ごめんなさい”と一言言うだけだ。
そう、だから何も怖くないの、私。
はぁーっと少し長めの息を吐き出し、準備は万端。
なずな、意を決して行きま……!
ーーって、あれ。
何でーー!?
「あの、立野くん。憐くんどこ行ったのか知らない?」
見ると、彼の姿はそこにはなくて。
私は急いで駆け寄って訊いてみた。
「あぁー。アイツなら、明日の支度があるとか何とかで早退したぜ」
「早退?」
か、帰っちゃったのー!?