転校生は憧れの人



そ、そんな、馬鹿な。


何で憐くんが帰ったことに気付けなかったの。


……どうしよう。



「なずな!」



その時、ポンと肩を叩かれた。



「梓ちゃん……」


「大丈夫?」



心配そうな彼女の顔が、私を覗き込む。



「う、うん」 
 

「はい、嘘」


「……っ」


「あたしじゃ王子の代わりになれないかもしれないけど……でも、ずっとずっとあたしはなずなの味方だから。無理だけはしないで」



優しく包み込むような笑顔。


それが向けられている私は、何て幸せ者なんだろう。



「……ありがとう。すごく嬉しい」



彼女の優しさが身にしみて、胸が熱くなって、涙が溢れそうになった。


私も、ずっとずっと梓ちゃんの味方だよ。






< 268 / 309 >

この作品をシェア

pagetop