転校生は憧れの人
「憐くん!」
気付いたとき、私は彼の名を呼んでいた。
鮮やかな黒髪。
猫のような瞳。
間違いない、憐くんだ。
「……一ノ瀬? 何でこんなとこにいんの」
私は、いつもより丸くなった2つの瞳に捉えられる。
驚いた様子の憐くんは、少しだけ私に近付いてきた。
言わなきゃ。
私が今言うべきなのは、あの言葉だけ。
「ごめんなさい!」
深く頭を下げて勢いよく叫んだ。
「私、憐くんに嘘ついた。約束守るって言ったのに……それに、訊かれた時も……」
「……」
ダメだ、顔を上げられない。
私は足元を見たまま、溢れ出す感情をそのまま言の葉に乗せていく。