転校生は憧れの人
「……でも、わかんないよ」
両手をギュッと握りしめる。
ぐちゃぐちゃになった顔なんて、一切気にならない。
今まで心の奥底で眠りについていた感情。
堤防を失った瞬間、それは歯止めが利かないものとなった。
想いが、言葉が、次から次へと沸き上がってくる。
私はただ、無我夢中で。
抑えたくても抑えきれなくて。
「憐くんが何考えてるのか、私のことをどう思ってるのか……全然、わかんないよ……」
「一ノ瀬――」
「何であんな風に優しくしてくれたの!? 何であの時彼女にしてくれたの!? ……何で」
「一ノ――」
「憐くんは私のこと、何とも思ってな――っ!?」
その瞬間、私の次の言葉は何かによって外に出ることを阻まれた。