転校生は憧れの人



「それで? アンタは何て答えたの?」



そう投げかけると、そっと逸らされた瞳を覗き込む。


そして、その表情をじっと見つめる。



「え、えっと、その……」



紅潮した頬。


一ノ瀬は、ゆっくりと言葉を紡いでいく。


俺はただそれを静かに見守るだけ。


……ていうか、凝視。



「……はい、って」



震えた唇から、微かに声が洩れた。


そんな言葉が響いた瞬間、俺の口角は不覚にも少し緩んだ。




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