転校生は憧れの人
「にしても。凄い人気だね、あれ」
「え?」
梓ちゃんが指差す方を見れば、一瞬にして理解。
キャーキャーと響く声を纏って、大勢の女の子達がある席の周りに群がっている。
相変わらずのその光景に、私は少し懐かしさを覚えた。
「かっこよくて、クールで。背はそんな高くないけど……そこがまた可愛くて良いみたいだね」
「あはは……」
「なずなは行かなくていいの?」
「え、私? べ、別にいいよ」
だって、あの集団の中に入れる訳がないんだもん。
意を決して入ったところで、きっと強烈な圧力に跳ね返されてしまうに違いない。
それに、そんな勇気、私には……。
――しかし、ちっぽけな私の思いが通じることはなく。
「えー! あたしも一緒に行くから、声かけてみなよ」
「ちょ、梓ちゃん!?」
有無を言わさず、梓ちゃんは私の腕を引いた。