転校生は憧れの人



『それは違う。……でも、一ノ瀬が無事で良かった』


『へ?』



一瞬、心臓がピクンと跳ねた。


そっぽ向いて言う彼に、何故か顔が熱くなる。


今までは、クールな彼しか知らなかった。


だけど今知ってしまった、憐くんの優しい一面。



『憐くんって、優しいんだね』


『別に』



すっかりいつも通りになった憐くん。


そんなギャップに、きっとあの頃の私は惹かれてしまったんだろう――。



「何ボーッとしてんの?」


「――っ!」



ポスリと被された帽子。


突然すぎて、私は呆然とする。








< 94 / 309 >

この作品をシェア

pagetop