素敵に政略結婚♪◆
建志は何も言わず、部屋の扉をガチャっと開けた。
春乃もあわてて後を追う。
二人は無言のまま階段を下りて玄関へと向かう。
玄関先にはリュートがいて、
建志の靴を用意してくれている。
二人に気が付いたリュートは静かに玄関のドアを開けて、
建志を待つ。
「い・・いってらっしゃいませ。」
春乃は、深々と建志に向かって頭を下げた。
建志は はぁ・・と深くため息をついて、春乃の頭を撫でた。
「春乃。言いたいことが有るならちゃんと言わないと解らないよ?
そうやって、
気を使われて隠される方が
僕はーー嫌いだな。」
建志はつぶやくように春乃に告げる。
春乃は驚いたように建志を見つめるが声が出てこない。
二人の様子をリュートが困ったように
見つめてから、
「時間がありませんので・・・」
と、二人の間に割って入る。
建志は、ちッ と軽く舌打ちをしてから、腕時計を見る。
確かにギリギリの時間だ。
「じゃ、行ってくる。」
と振り向きもせず
家を後にした。
ガチャンと無機質な音を立てた玄関を
春乃はただぼーーっとしばらく見つめていて動けなかった。