素敵に政略結婚♪◆

型を抜いて後は焼くだけ。

おいしくできますように。

そんな願いを込めて、オーブンのボタンを押した。


「奥様。おいしくできたら、みんなでお茶にしましょ?」

ナナは楽しそうに
ティーセットを出し始める。

田代さんと春乃はシンクで洗い物をしていた。


「お・・おいしいかなぁ?」

ちょっと不安。

「奥様。ワシが教えたんだから、
 おいしいに決まってる!大丈夫。

 ナナ!松本もよんでこい。裏庭の手入れ中だろ?」


はぁーい。と言いながら
ナナは白いエプロンをなびかせてキッチンを後にした。

楽しそうに松本さんを呼びに行くナナの後ろ姿が消えた頃、
可愛らしい機械音が響いて
クッキーが焼けたようだ。


「た・・田代さんっ。
 できました!」

ふんわりと焼き立てのいい香り。
濃いめのきつね色のクッキーがオーブンの中で綺麗に整列していた。

ーーおいしそうっ。

春乃はうれしくなって、
オーブンからクッキーを取り出した。
ミトンをはずして、一つ味見のために取ろうとする

「あちっ」

「奥様!気を付けてくださいっ。」

鉄板に触れた指がじぃんと痛む。
田代さんはグイッと手を引いて、
春乃の指を水につけた。


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