恋のレシピの作り方
 そんなことはできない―――。

 奈央は何度も内心で呟いていた。

 けれど、何故、自分がそうできないのか理由がわからなかった。

「まぁ、でも……少なくとも俺は、お前の事、ちゃんと見てるから」

 一条は奈央の頭を軽く撫でると、少し照れくさそうにして、グラスを煽った。

「……一条さん」

 それは女として? それとも、部下として? 奈央はつい口をついて出そうになった愚問を慌てて飲みこんだ。
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