恋のレシピの作り方
 奈央は早々に仕事を切り上げ、気分がへこんだ時の避難所へ来ていた。


 ―――ホテルの展望台から今日もよく夜景が見渡せる。

 遠くから車のクラクションや街の喧騒が、生ぬるい風とともに聞こえてくる。



(私に、アルページュの新作メニューを作りだす事ができるの?)



 今までにないプレッシャーに押し潰されそうになって、重苦しさがのしかかってくる。

 何故自分が? 何故自分じゃなければならなかったのか? 何故一条は自分を選んだのか?

 奈央はそのことばかり考えて今日一日仕事にならなかった。


(だけど、そんな弱音吐いてられない……)


 奈央は気合を入れ直すように、フェンスをきつく握り締めた。




 その時―――。
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