恋のレシピの作り方
「これ、お前の新作?」

「はい、まだ試作中なんですけど……」

 一条が顎に手をあて、なにか考えているような仕草をすると、奈央は無性に自分の作ったものが恥ずかしくなってしまった。

「カトラリー」

「は、はい!」


 催促する一条の手にナイフとフォークを差し出すと、唇の端で笑って一条はポワレに手をつけ始めた。

(嘘! 一条さんが! 私が作ったの……食べてくれてる)

 今まで、味見をされたことはあったが、こうして個人的に食してくれるのは初めてだった。

 フォークとナイフにしなやかな指が添えられている―――。

 一条の完璧なカトラリーのマナーに、奈央はしばらく見蕩れてしまった。
< 169 / 457 >

この作品をシェア

pagetop