恋のレシピの作り方
(スープの時みたいになりませんように……)


 レシピに目を通している一条には相変わらず見惚れる。けれど前回のスープのトラウマが一瞬蘇って気持ちが重くなっていく。

(余計なこと考えない……)

 奈央は不安な面持ちを隠すように毅然と振舞うことに努めた。

 一条は時折、何かを考えているのか手を止めてポワレを正視したり、首をひねったりしていた。奈央はそんな姿を傍らで見守っていた。

 ―――その時。
 

「このラタトュイユにはイマイチ歯ごたえがない、水っぽすぎるな」

 しばらくすると、一条がカトラリーを置いて言った。

「え……?」

「でも、味は悪くない……だけど、もう一歩だ、俺から一つアイディアを提案しようか迷ったが……言うのやめた」

 一条はフキンで口を拭うと、もう一度レシピに目を通した。
< 171 / 457 >

この作品をシェア

pagetop