恋のレシピの作り方
 目の前にふっと影が降りてきたかと思うと、奈央の頬に啄むような唇がチュッ
と音をたてて掠めた。


「ガタガタ言うな、部屋はいくらでもあるんだし、好きに使えばいい。それとも、俺に添い寝して欲しいわけ?」


「な、なななな」


 今にも吐息がかかってしまいそうなくらいの距離で顔を覗き込まれると、奈央は顎をぐっと引いて俯いた。


「bonne nuit」
<おやすみ>

 ぐしゃっと奈央の頭をかき混ぜるようにすると、一条はサッと身を離してあくびをしながら寝室に入っていった。


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