恋のレシピの作り方
「誠、間宮夫妻の予約なんだけど……明日だそうだ」

「えぇ!? 明日ですか?」

「気が向いたから、明日はフレンチの気分なんだとさ」

 羽村が声を荒らげて手元の予定表パラパラとめくって予約を確認を取る。そして腰に手を宛てがいながら、ため息混じりに鼻を鳴らした。

「あの夫妻のサプライズ予約にはもう慣れただろ?」

 
「お疲れ様です、一条さん」

 ―――社会人として、挨拶は基本。


 「あぁ」

 奈央はにっこり笑って会釈をしたが、一条は書類を見ながら見向きもせず、ただぶっきらぼうに短く返事をしただけだった。

(な……! それだけ? 別にいいけど……愛想ない人)

 奈央は挨拶をしたのに、なぜか損した気分になって、休憩室を後にした。
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