恋のレシピの作り方
(ちょ、やっぱり帰ったほうが……でも、勝手に帰ったら後で何言われるかわからないし)


 乱れた心拍数を整えて、気がつくとリビングの静けさ中に奈央は一人佇んでいた。あたりを見回すと、ローザンホテルのスイートの一室のはずだが、部屋の内装は普通のマンションの部屋のようだった。

 
 ―――結局。


 あれこれひとしきり考えた挙句、奈央は睡魔に勝てなかった。

 
(優しい人なんだろうけど、やっぱり一条さんってわからない……)


 ソファに座り込んでため息をつくと、あまりにもソファの座り心地がよくて、誘われるように身を横にする。すると、身体が徐々に鉛のように重たくなっていくのがわかった。

「考えても……しかた……な」


 奈央はついにそのまま眠りの淵に落ちていった―――。
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